アズワンネットワーク鈴鹿コミュニティ(片山 弘子:MailNews 2018年5月号)

※ この記事は、KIESS MailNews 2018年5月号に掲載したものです。

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気持ちのいい初夏の日差しの中で、田植えが始まり、キュウリやナスの収穫も始まっています。コミュニティには各地から、新しい社会の取り組みとして関心を持って見える方が続いています。そんな今の様子をお伝えしたいと思います。

 

4月27日 サイエンズアカデミー
内藤正明先生をお迎えして ~正しさをどう測るのか~

4月から公募をスタートした「サイエンズアカデミー」の学生たちにお話をしていただいた。アカデミーには、現在20歳から40歳未満の学生が、国内から5人、韓国から5人、ブラジルから2人が参加し、6か月以上3年間の研修をしようとしている。目的は、各々の地域や現場にもどって、そこで一つに調和した世界を実現できる次世代のリーダー養成ともいえる。アカデミー生の暮らすアズワンハウスに着くと、よっしーこと吉岡翔一郎君(福岡出身)が出迎えてくれた。アカデミーの説明を受けて、

「自分の経験というものは、時間と空間に限られた中のもの。比べることが出来ない、二度繰り返すことが出来ないものだから、ただ自分が経験するだけに終わっては基礎づくりはできない。よい本をしっかり読んで世界を広げたらいいね」

「若い時、自然科学でいう合理性、その立場で正しさを追求し、それ以上ないまで検討して、技術的にも非の打ちどころのないと自負を持って打ち出した仕事が、結果として地域社会や住民に歓迎されないという経験をした。この経験があって、ものごとのどこからみても正しいと受け入れられる、正しさを判定する基準は、科学的合理性だけではない、では何なのだ、と問い続けている」

真、善、美 - または、知情意を対応させて、知、意、情。真理、宇宙の理、社会合理性、個人の感覚などをボードに書き、具体的な指標を以って探究する大事さを言われた。

「例えば、琵琶湖の水の保全では、琵琶湖の水のきれいさの程度を、どのように、どのあたりで、よいと判断すれば、すべてを満たすのか。琵琶湖の水は近畿(滋賀、京都、大阪、神戸など)の広範な地域の飲料水である。同時に、漁業の現場でもある。景観の美しさという価値もある。琵琶湖をめぐる政策決定者、実務者は、どんな判断基準を以って琵琶湖の水の浄化程度を決めたらよいか?」

アカデミー生から「人は宇宙の中にあって初めて存在し、社会もまたそう。その中にあってどう生きるのか見える人たちが社会をつくること。総合的な捉え方が必須か」

内藤先生「正しさの基準ということで、いま考えておきたいのは、社会に役に立たない、あるいは社会的弱者とは何だろうということだ。相模原の施設で起きた殺人事件の事例で、殺害の理由が、社会の役に立たない人たちに莫大な費用をかけている、社会にとっては正しいことをしたという。これに賛成する声も多かった。ではなぜこういうことをしてはいけないと言えるのか、その根拠は何だとおもう?」「戦争時代であれば、兵隊でよく働ける人とそうではない人。利益の追求が優先される社会であれば、実務的な仕事が出来る人と、出来ない人、経済が下降気味の時には、茶道だ文学だ、芸術だなどの文化領域に時間や金をかけるなど論外となって、育ちようがない」

1時間という限られた中にも濃密な内容で、「また次の機会に続きを」と、これからの若い人たちの心に余韻を残して散会した。

サイエンズアカデミーWebサイト
http://as-one.main.jp/zaidan/HP/

 

Teal組織

最近、次世代型組織とか、ホラクラシー、自律分散型組織、生物型組織、学習する組織などなど、呼び名は様々だが、次の時代に求められる組織像が話題を呼んでいる。上下、規則、命令、売り上げ目標、予算やノルマなど一切なくても、売り上げが圧倒的、という組織が出始めているそうだ。力で人を抑えて管理する組織では、人の創造性は発揮されないという認識がそこには共通してみられるのと、同時に、人の能力が最大に発揮されることを願う人の方が多いというあらわれだろうか。

まるで私たちのコミュニティでの日常や、「おふくろさん弁当」みたいだなあと思っていたら、どうもそのような紹介がされているよと教えてくれる人がいて、驚いた。これからの組織について、特にビジネス書で売り上げのトップが続いているという『ティール組織』(フレデリック・ラルー 著,嘉村賢州 解説,2018.1刊)で、嘉村さんが解説の中に、日本の事例としておふくろさん弁当を、一行ほど取り上げていた。

一行、ということで、また関心が遠くなりそうだったところが、そういえば嘉村さんと言えば、NPO法人 場とつながりラボhome’s viの代表で、数年前に嘉村さんではないが、岩川さんの縁で、home’s viの仕事についてKIESSで発表をしてもらったのを思い出した。

資本主義に掉さして矛盾が拡大するなんて私は嫌だが、人が集まって何かを営むという人間らしさの日常に、より快適さや本来的なものを求める流れがあって当然だろう。

人類史全体から、人の集団作りを俯瞰した中で、新しい組織の概念として「Teal組織」が生まれ、今年の4月にギリシャのロードス島で開催された研究会には、世界中から研究者や実践家が集まったそうだ。日本の中でもそうした欲求が高まっているということで、より人間性が発揮される時代に向かおうとしているように見える。

 

人を縛らない組織運営の挑戦
恵共同体の81人がスタディツアー

ゴールデンウィーク。ソウル市内にある恵共同体から、ほぼその全員である81人が2泊3日のスタディツアーで滞在していった。

スタディツアーの動機の一つに、創始者がいなくなっても、自分たちだけで気持ちのよい人間関係を維持し、発展的に共同体を展開していけるかどうかという共通の思いが伝えられていた。創始者は元キリスト教の牧師さんだが、宗教でつながっているのではないそうだ。しかし、「牧師さんがそう言うなら」と、人格者である牧師さんとの信頼関係で、表面上は解決されたように見えて、実際は本当には納得していないこともあって、それを牧師さん自身もまたメンバーも共通の課題に感じていたそうだ。そこには、自分たちの世代だけで終わらせたくないという願いがあった。

その一方で、私たち自身のチャレンジでもあった。

これまでも様々な団体が訪れたが、81人という規模の人数を受けれたことはない。

ツアー企画や訪問者の宿泊などを担当する、「ヴィジターズ」と呼んでいる6人ほどのメンバーがいる。通常は、そんなメンバーで運営しているが、恵共同体の81人に関しては、そうはいかないだろう。他のメンバーの協力も必要になってくる。

鈴鹿コミュニティの運営は、一人一人の自由意志を尊重し、それでいてコミュニティ全体として調和していくスタイルだ。その運営方法は、多数決で物事を決めたり、命令で人を動かすことはしない。組織そのものに束縛や強制がなく、個人も組織も「自由」なのだ。やさしく言えば「しなければならない」ことがない。各自「してもいいし、しなくてもいい」、するもしないもその人次第という雲を掴むようでもある。そういう「考え方」(思想)で行動するのでもない。「このコミュニティではそうしてるよ」というのも一つの強制になってしまう。

こういった人を縛らない組織運営で、果たして、大型企画が成立するものなのかどうか?

当時の様子をブログでも紹介しています(文:岩田隆)
http://as-one.main.jp/suzuka/sb1/log/eid1501.html

 

「私たちはなぜ地球に存在しているのか」
人類の未来と都市型エコビレッジとしての意味

4月14日、私が現在代表を務めさせていただいているグローバルエコビレッジネットワークGEN-Japanは、今年もユネスコ認証教育プログラムガイアエデュケーションのメイン会場に、鈴鹿コミュニティを使わせてもらっている。

4~9月の毎月2泊3日行われるが、5月までは特に、一人一人を尊重した柔軟な社会組織を実現するためのベースとなる「聴き合う」経験を重ねている。何でも聴き合えるお互いから生まれる世界を少しずつ体験しながら、日常との往復の中に、本来の自分の願いを取り戻しはじめていく。

私たちのプログラム内容について、ガイアエデュケーション本部の学術ディレクターであるジョバンニ・チャ―ロ氏は、5月初めに世界のガイアエデュケーション関係者に向けて、以下のようなメッセージを発信した。

今世紀終わりまでに人類の90%が都市部に集中して暮らすプロジェクトがある。それは、挑戦的な新たな世界観を意味している。これからの人類の存続にとって、都市化は最大の推進力となりうるからだ。人口当たりのエネルギー消費を抑え、出生率を下げ、置き去りにされた田舎の古い集落を自然に返していきながら、人間としての適正な生き方を模索することに他ならない。アズワンの活動の中でも「サイエンズ・メソッド」にもとづいてユニークな学校をつくっているのが印象深かった。その学校ではこんな質問が,ひたむきに探究されている。「この地球上で人間であることは何を意味しているのか。」そして、「私たちは何のためにここいるのか」

詳細はこちら ⇒ http://gaia.gen-jp.org/
内容の報告 ⇒ http://gaia.gen-jp.org/report/
参加者からの感想 ⇒ http://gaia.gen-jp.org/voice/

 

4月15日 ガイア公開講座報告
「グローバル経済からローカリゼーションへ」

 

鈴鹿カルチャーステーションで、ガイアエデュケーションの一部を公開講座で紹介し、参加者と市民の70人が参加した。4月度は、文化人類学の辻信一さん、タイでマインドフルネスを組み入れた国際リーダー養成講座を開催している、プラチャーフタヌワット氏に、世界の動向とローカリゼーションの必要性を紹介した。

(かたやま ひろこ:NPO法人えこびれっじネット日本 GEN-Japan 代表)

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