※ この記事は、KIESS MailNews 2014年10月号に掲載したものです。
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教育プログラムの開催に協力
アズワンコミュニティを会場にした『持続可能な社会づくりカレッジ』が、日本エコビレッジ推進協議会(JEPP)の主催、KIESSの後援で開催され、私もスタッフで参加しました。5月の内藤正明先生とハーン博士を迎えてのシンポジウムを皮切りに、5月、7月、9月にそれぞれ2泊3日の全3回、第一期のシリーズを終えました。
いま各地で取り組まれようとしているコミュニティづくりで直面している課題は、技術的な側面より寧ろそれを執り行う、主に人間関係に集中していると言っていいようです。コミュニティ経済の構築も含めて、具体的なコミュニティづくりの核心について検討したいという要望で、アズワンコミュニティでの現状や、失敗事例も含めたこれまでの経験も参考にしながら、少数でしたがそれぞれに活動経験が豊富で指導的な立場の参加者で、切実感から突っ込んだ検討が続きました。
各回の検討テーマは、以下の通りです。
5月:持続可能な人間関係とは
コミュニティづくりがなぜ必要なのか。内藤先生による、「なぜコミュニティづくりなのか」ハーン博士「ドイツの先進事例に学ぶ」と、アズワンコミュニティのスタディツアー。参加者の活動現場で感じている課題を共有し、決まりや遠慮気兼ねが必要な間柄と、それらが不要な間柄について調べようとしました。
7月:コミュニティづくりのベースとなる『話し合い』とは
ちょっとした場面で意識の差から対立が生じた事例、遠慮や気兼ねから十分に課題を話し合えなくなった事例、リーダーとメンバーの対立した事例など検討し、アズワンコミュニティでの失敗事例と現在の様子などを参考に、新しい話し合いの可能性を共有しました。
9月:本当の親しさが生み出す贈り合いの経済とは
コミュニティ経済の課題について、アズワンコミュニティの贈り合い経済の事例を参考に、お金と幸せの関係、検討しました。
【感想から】
- カレッジのタイトル「コミュニティづくりは持続可能な人間関係から」を見た直後にすぐ申し込んで、健全な関係を育てにくくするものは何か、安定した人間関係の基になるもの、本当の親しさとは? 遠慮・気兼ねとは? コミュニティの核心とは? と考えて、カレッジの時間以外の日常で実体験できた。今もその体験は続いている。カレッジで得たこととしては、各々の実際を丁寧に出し合うことで、自分と他者が相互に影響・循環し合い、カレッジを通して「自分の状態」を客観的に見られるようになってきたこと。お互いの力で、そんな空気を生み出す醍醐味を経験できた。カレッジで創造していく体験を通して、自分が関わっていた活動場所とは「質」が違うことに気づいた。もっと自分を調べていきたい。
- カレッジでは、知識や情報を積み上げていくのでなく、自分の観念や概念を「引き算(マイナス)」しながらゼロになっていくことで、より深まっていくことを体験できた。
- 「自分の実際」を認め、お互いを認めることが、カレッジの焦点であり、社会づくりのテーマになってくると思った。
- カレッジに参加して、人間や社会に対して、抵抗・拒絶していた自分の見方や捉え方が反転したことで、一人で抱え込まなくていい、「安心」のある人との関わりを実感した。
- 5月から始って5カ月間を振返ってみると、参加者やスタッフと共に毎回泣いて笑ってのカレッジを通して、人のもつ力と可能性の素晴らしさを体験させて頂いて感謝の気持ちでいっぱい。カレッジ以外の日常も、参加者のみなさんを心理面・物理的な面でもサポートしていく、アズワン在住の他のスタッフの姿をみて大きな体験にもなり、人との関わりや本来のコミュニティや社会について、自分と向き合う機会にもなった。
- 人が影響し合いながら自分を知っていこうとする力、人の根底にある、安心や安定を求めている状態、人と人との本来のつながりがどういうものか、振り返りながら実際に体験できたことは、自分にとって大きかった。
- 最終日の発表では、時空を超えて一人ひとりの発表内容が合わさって、知性が一つになったような一体感を感じることができ、3回目で、参加者や他のスタッフのみなさんと、コミュニティの核心について発表するまで、一緒に進んでいくことができたことに、本当に感謝しています。
(感想は日本エコビレッジ推進協議会・林悦子氏まとめより一部抜粋、詳細はhttp://jssc358.wix.com/college)
トランジションタウン運動やグローバルエコビレッジネットワークの一員として
トランジションタウン運動は、イギリスを発端として、ピークオイルの問題など予測されるカタストロフィに備え「自分たちの地域で食糧やエネルギー自給など、持続可能な社会の方向に、現状そのままの状態から地域社会を変えていこうとする」市民運動で、数年前から日本でも各地で草の根的な取組が始められています。私たちも2013年からその一翼を担おうとメンバーに入っていましたが、このトランジションジャパンの運営委員に認めていただいたことを機会に、自分たちの活動を前に出すのではなく、日本全体の活動が円滑に進んで行くように、協力していこうとしています。
また、グローバルエコビレッジネットワーク(GEN)がスコットランドのフィンドフォンを拠点に世界各地のエコビレッジをネットワークしていますが、アズワンは、従来型のメンバー制が明確な独立したインテンショナルコミュニティとは異なる、新しい取り組みとして、GEN-アジアオセアニア(GENOA)に団体登録をすることができました。またGENの日本代表の方が急きょ辞められることに伴って、ピンチヒッターのGEN-Japan代表を私が引き受けることになりました。
日本の市民運動は各団体それぞれ頑張っているにもかかわらず、全体として動きが弱々しいと指摘されます。自然災害でも社会的状況でも厳しい事態が次々起きていることに対して、はっきりとした方向性を示せない状況に追い込まれているように思います。
人間の経済活動や諸活動が原因で自然災害以上に取り返しのつかない事態に対して、つい無力感に襲われそうになりますが、むしろこの時代だからこそ、人の出会いを加速し、争いのない幸せなコミュニティを実際に作っていくことが急務でしょう。
実際にコミュニティを作る上での、人間についての理解、社会システムの試行、などにおいて、アズワンコミュニティのこれまでの経験が生かされる様に、よりシェイプアップが必要な段階に入ったと思われます。
実りを楽しめる機会を、地域に提供する
9月から10月にかけて、街のはたけ公園では近所の保育園の親子、障害児を抱える家族の会をはじめ地域の人たちに、オクラやブドウ、枝豆やサツマイモの収穫を楽しんでもらうことができました。参加費は一回500円、口コミで繋がった人たちが、毎回30~40人、多い時には100人近くみえるようになりました。2010年には耕作放棄地寸前だったこの一角が、地域に愛され、暮らしを潤しているのはうれしいことです。また鈴鹿の里山でも、炭だし祭りにたくさんの親子がみえて、最近できたばかりの里山キッチンでバーベキューを楽しんで帰って行きました。お金を頼りに食料や電気やガソリンを買って、家族だけでなんとかする暮らしに慣れた街の人たちが、街の中にある農園や里山に訪れながら、豊かな実りを分かち合う楽しさの中で、個別にお弁当を囲む家族単位の行楽から、枠を超えた輪が広がり、コミュニティの感覚をひととき味わっていきます。
コミュニティづくりの試みとして、安心して暮らせるシステムを
こんな里山や農園、その他カルチャーセンターやおふくろさん弁当など、コミュニティづくりの活動を支えているメンバーは、もちろん関わり方は自由に選択できるのですが、2013年からスタートしたシステムに乗って、自分の暮らしや人生についてコミュニティオフィスで何でも相談できたり、まだ食糧全般ではないのですが、米や野菜、お惣菜と、トイレットペーパー等購入品などが、お金を使わないでいつでも手に入れたり出来るようになってきました。その結果、それぞれのやりたいことに専念しやすくなっています。たとえば、健康保険や自動車保険、スマホに変えながらも電話代が月々2,000円以内で済む方法、家具や家電、衣類、不動産情報など、それぞれが得意な分野の情報をシェアして、どうやったら無駄な出費を抑えて一人一人のやりたいことに資金を動かせるか等。
一般的に、集団の暮らしで経済を扱うとき、集団の取りまとめ役や調整役が管理して、話し合わなくてはならない。前例やルールをもとに個人個人の違いを無視した決済がされがちだったり、あるいは話し合った結果の合意に縛られたり、上下関係が出来て仕舞ったり等おきがちです、自由でいたい、という気持ちから、やはり個別経済、家族単位で何とかする経済を向きがちになるのも無理からぬことでしょう。しかし個別の経済力で家族の暮らしを何とかする方法は、一部の人には出来ても、大多数には限界が来ている、地域共同体というもともとの生活圏のゆりかご的存在を、お金を介在させることで寸断してしまった日本では、大変に難しい状態です。
その矛盾を超える新しい経済への試みとして、たとえば若い子育て世代は子育てに安心して専念し、シニア世代はいつまでも若々しく新しい生きがいに専念できる、それぞれの人生を十分に満足して生きられる関係が、コミュニティ単位で大きな家族として経済をとらえることで可能にならないか、具体的な経済やシステムの面から人を支えていく、一つの試みとして、スタディツアーなどで一部紹介しています。
(かたやま ひろこ:NPO法人鈴鹿循環共生パーティー理事)
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