※ この記事は、KIESS MailNews 2014年1月号の記事に、一部加筆修正を加えたものです。
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最近話題の本として「原発ホワイトアウト」1)が面白いと聞いて読んでみた。物語としても読ませるうまいストーリーテラーだと感心させられたが、その背景となっている政官財の一体支配構造と原子力村の記述も、フィクションとして書かれているが迫真のものがある。この辺りのことは、霞ヶ関のまさに末端ではあったが20年余り垣間見てきたことからしても、事実であると感じる。だから、著者は本当に経産省の現役キャリアであるだろうが、古賀さんと同じように今後は飛び出して外で活動するのか、それとも巧妙に立ち回って内部から告発を続けるのだろうか。「秘密保護法」はこの種のことには及ばなければいいが。
原子力村の巨大で陰湿な力の実態を描いた本としては、「知事抹殺」2)がある。これは原発の設置に反対した元福島県知事自身が書かれた実話である。知事でさえ邪魔だとあれば抹殺してしまうことが本当にあるのか半信半疑であったが、このホワイトアウトではそのことをフィクションの形を取ってはいるが、実にリアルに書かれていて、本当にあったことだと確信させられる。
電力会社がどれほど法に守られて巨大利益を上げているか、その利益に与かって政治と行政が電力業界の独占体制を維持するために、国家権力から闇の力まで簡単に動因する様子が詳しく描かれている。普通ならこんなことは一寸した事実を誇張して、フィクションに仕立ててあるのだろうと思って読むだろう。しかし、霞ヶ関を覗いた経験と、最近になって原子力村の実態を垣間見たことを重ね合わせると、ほとんど事実のような感じがする。とすると、この国はどこまでも一部の特権的な集団に権限と金を独占されて、庶民?はどうしても沈んでいくしかないのかと、とても悲観的になる。
だがしかし、この国だけが酷いのだろうか。いや、世界のニュースを聞くと多くの国でははるかに酷いようであるし、またいつの時代でもそれは現実であった。つまり、古今東西“人間とは自己中心的で、他者を犠牲にして欲望を充足する生き物である”といわざるを得なくなる。
参考文献
- 若杉 冽:原発ホワイトアウト,講談社,2013.
- 佐藤 栄佐久:知事抹殺 つくられた福島県汚職事件,平凡社,2009.
(ないとう まさあき:KIESS代表理事・京都大学名誉教授)
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