※ この記事は、KIESS MailNews 2017年4月号に掲載したものです。
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百花、春至りて、誰がために咲く̶寒暖の差の激しい中にも、桃や早咲きの桜だけでなく、道端や畔の草花も、季節を迎えて一斉にそれぞれの花を咲かせています。私たちも自然界のリズムを感じながら、ジャガイモの植付けを終えたところです。
さて、「人が幸せになるための、社会づくりや、会社づくり」を目的とした、探究や学びの場として、最近とくにコミュニティが使われるようになってきました。今月号では、その様子を紹介します。
ガイアエデュケーションの開催
昨年グローバルエコビレッジネットワーク(GEN)・Japanを法人化した中で、ユネスコの持続可能な社会づくりのための教育プログラム(ESD)のグローバルアクションプログラム(ユネスコGAP)に認定されている、ガイアエデュケーションを実施してはどうかとなって、一年かけて準備を進めてきました。これは、先進国も途上国も、世界をあげて各地域に持続可能な社会づくりを実行していくことを願って作られたものです。
呼び掛けにこたえてくださった、KIESS代表の内藤正明先生をはじめ、環境や社会など各分野で日本を代表する講師陣10人と、持続可能な地域づくりの実績を持つ3つの地域が結集して、今回プログラムを提案したところ、ユネスコGAPとガイアエデュケーションから認証を得ることができました。その結果、今年4月から9月の半年間にわたって、2泊3日の6回シリーズで開催することになり、アズワンはその主会場となります。
ガイアエデュケーションは、1990年代の終わりに、新しい持続可能な社会を実現するための人材養成を目的として、各国から55人のエデュケーターが集まって作られたガイドラインで、世界観・社会・経済・環境の4分野と各5つずつのモジュールで合計20項目の指標を統合的に学ぶよう示され、地域の実情にあった内容を構成できる特徴があります。
開催一月前の3月20日現在で申込受付を締め切り、いま内容の最後の詰めや受け入れ準備を始めているところです。講師や他の実施会場のみんなが頻繁に連絡を取りながら、日本を縦断する協力体制に、心強いものを感じています。
【ガイアエデュケーションHP】
http://genjp2015.wixsite.com/education
持続可能な社会づくりカレッジ
これまで8期の持続可能な社会づくりカレッジを開催してきましたが、修了生たちがベースになって、福岡県直方、神戸市垂水区、浜松市しじみ塚、岩手県盛岡市内にコミュニティづくりの活動が始まっています。
「社会」というと、いきなりぼんやりして、他人事になりがちですが、このカレッジは、「社会=人と人の間柄」ではないかとすることで、具体的に自分の社会をとらえるところから始め、それぞれの足元に、自分の「コミュニティづくりの核心」を見出し、そこを実践していける人になっていくことです。
コミュニティづくりは、暮らしそのものなので、心理的な面が重要なファクターになります。心の面を扱うことを難しくとらえたり、嫌ったりする人も多いですが、しかし、人の幸福を目的とする新しい持続可能な社会を目指すならば、どうでしょうか。毎日の暮らしが幸福であるか。これはまさに、そこにいるお互い同士の間柄から来る、内面の充足あってのことで、そこにいる人と人の間柄は、具体的には、挨拶まで含めて会話や話し合いの質、そのような言動を起こしているお互いの内面の状態が決定していくといっていいでしょう。具体的にコミュニティづくりをスタートし始めた人たちにとっては、現実の切実な課題で、カレッジ参加の動機であることも多いです。
カレッジ参加者は、アズワン鈴鹿コミュニティのメンバーが楽しく語る、うまくいかなかったり、行き違ったりした具体例、話し合って変わってきたコミュニティのプロセスに触れると、ああ、あるあると、自分の内面のどこに焦点を当てていくのかを学び取っていきます。そして、「お互いによくなっていきたいのに、なぜ私は話し合えなくなるのか」と観察する力を養い、「何でも話し合える状態」を参加者同士で体験します。
人と生きることが、自由度が増すことであり、深いところで安心できると感じられること。それが日常の具体的な場面から、気付いた時から誰でも手掛けていける。持続可能な社会実現への道が、具体的になってきた、そんな感触を得ています。
焦点が明らかに見えて、誰か一人が気付くと、それが瞬く間に他の人の気づきになるという、人の心のダイナミックな変容ぶりには驚くばかりです。
【第8 期の参加者感想】
http://jssc358.wixsite.com/college/kansou8-3
経営カレッジ
その社会づくりカレッジに参加していた経営コンサルタントの方からの発案で、おふくろさん弁当に焦点を合わせ、人が幸せになるための会社作りという目的で開催するようになり、今度の6月で第6回を迎えます。
地産地活で、コミュニティに限らず地元からも社員さんがいて、毎日、その時の野菜を生かした調理をしては、その日のうちに鈴鹿~四日市~津の各家庭や職場に届けていく。毎日変化することばかりの上に、弁当屋として一般社会で仕事として通用するための、さまざまな制約がある中でも、自由で安心して働ける会社であり、売り上げも年間1億4000万を超える実績を出してきたということで、そのプロセスに直接学ぶ機会です。
東アジア国際留学プログラム
2月に立教大学を会場に開催された、『東アジア社会的企業シンポジウム』に並行して開催された『東アジア留学プログラム』のミーティングで、コミュニティとおふくろさん弁当について発表してきました。台湾、韓国、日本の3カ国から事例が発表された中で、埼玉県小川町の有機農法の取り組みとアズワン鈴鹿コミュニティのおふくろさん弁当が注目され、意見交換が活発に行われて関心を呼びました。
その結果、2017年度から韓国からの交換留学生を、立教大学、小川町、アズワンコミュニティで受け入れることになったのですが、アズワンの、2011年から始まった韓国フリースクールの学生交流をはじめとした留学生受け入れの経験が評価されました。
3月からブラジルから半年から2年に亘る留学生が3人滞在中。2年間滞在するのは20代の若者で、有機農法を勉強してきたのですが、アズワンにはコミュニティを実際に作る人になりたくてやってきました。
写真は、先日行われた、留学生交流会の様子です。これからにむけて、各地でそれぞれの実情に応じた個性豊かな持続可能なコミュニティづくりが進展していくために、私たちも、留学生をより広く受け入れることができるように、整備を進めようとしているところです。
(かたやま ひろこ:NPO法人えこびれっじネット日本 GEN-Japan 代表)
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